この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
書店消失と「本が買えない街」の危機
日本の書店数は右肩下がりを続けており、ついに市町村の4分の1に書店が存在しないという状態になりました。書店は「再販価格維持制度」によって価格を自ら決められず、利益率が低いという構造的な問題を抱えています。本の流通が滞ることは、長期的に見れば知識の欠乏による「国力の低下」を招くことも懸念されています。
この縮小する市場を助けるために、大日本印刷(DNP)が「書店と出版社をマッチング」する新サービスを開始しました。在庫がない本を200部から復刊でき、それを発注した書店でのみ独占販売できる仕組みです。書店は在庫リスクを負う代わりに、利益率を35%まで引き上げることができます。これはニッチなニーズを繋ぎ、市場を維持するためのとても有効なアイデアです。
オープンネームが変える「事業承継」の物語
もう一つの注目すべき事例は、事業承継マッチングの「relay(リレイ)」です。これまでのM&Aは、情報を隠す「ノンネーム」での交渉が主流でしたが、リレイはあえて「オープンネーム」で募集を行います。
財務数字だけでは伝わらない、経営者が事業に込めてきた「想い」や「ストーリー」を可視化することで、その熱意に共感する後継者候補を公募します。市場が縮小しても、そこには固定客や地域の歴史といった「目に見えない価値」が残っています。これをオープンに伝えることで、数字以上の価値を見出すマッチングが可能になります。
AIが解決する「空き家」マッチングのペイン
さらに、「空き家問題」においてもAIを活用した革新的なマッチングが始まっています。地方の空き家は手続きが複雑で情報が揃いにくいというハードルがありましたが、ポルティ社は個人情報の登録を不要にし、AIが売却額を即座に算定するサービスを提供しています。
民泊やセカンドハウスとしての需要が高まる中、複雑なプロセスを簡素化し、「めんどくさい」というペイン(痛み)を取り除くことで、休眠資産に再び息を吹き込むことができます。市場がニッチになればなるほど、個人と機会を結びつける「マッチング・アルゴリズム」と「ストーリーの力」の重要性は高まっていくでしょう。

