この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
入社直後に「億ション」購入、50年ローンで「トキ消費」も満喫する若者たち
「若者の〇〇離れ」という言葉をよく耳にしますが、消費に関しては、Z世代を中心とした若者たちが非常にユニークで活発な動きを見せています。その象徴とも言えるのが、「入社直後に1億円超のマンション(億ション)を購入する」という、これまでの常識と異なる消費スタイルです。彼らはなぜ高額な買い物に踏み切るのか、そしてその裏にはどのような価値観があるのでしょうか。
「買い逃す恐怖」が背中を押す
首都圏の新築マンション購入者に占める20代の比率は年々上昇し、2024年には16.3%に達しました。その大きな動機となっているのが、「不動産価格がこの先も上がり続けるのではないか」という恐怖、いわゆるFOMO(Fear of Missing Out:取り残されることへの恐怖)です。家賃も高騰する中で、「迷っているうちに手が届かなくなるくらいなら、早く買ってしまった方が得だ」という考えが広がっています。
「50年ローン」で月々の負担を抑え、趣味も充実
高額なローンを組む一方で、彼らは日々の生活の豊かさも諦めません。そのための武器となっているのが、返済期間が50年にも及ぶ超長期の住宅ローン「フラット50」です。このローンの申請件数は、30歳未満で前年比2.6倍に急増しています。返済期間を長くすることで月々の返済額を抑え、住宅を所有しながらも、趣味や旅行といった「トキ消費(その時にしかできない体験にお金を使うこと)」のための余力を確保しています。加えて、抑えた返済額分を新NISAなどの資産運用に回し、将来の繰り上げ返済の原資にすることも考えています。
「ポイ活疲れ」から「特別な体験」へ
この「トキ消費」を重視する価値観は、クレジットカードの選び方にも表れています。ポイント還元率を比較して賢く買い物をする「ポイ活」に疲れを感じる若者が増える一方で、年会費が高額な富裕層向けの「ラグジュアリーカード」の20代入会者が増加しているのです。彼らが求めるのはポイントではなく、限定イベントへの参加権や空港ラウンジの利用といった、お金では買えない特別な体験価値です。
Z世代は、住宅という大きな資産と、日々の「トキ消費」を両立させるために、超長期ローンや資産運用といった金融の仕組みを柔軟に、そして戦略的に活用しています。彼らの新しい消費スタイルは、今後のマーケティングを考える上で見逃せないトレンドと言えるでしょう。