スポーツに関わるテクノロジーに期待と不安が広がる|よげんの書:25年9月号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


スポーツ配信シフトがもたらす「新たな観戦体験」と「視聴格差」

2023年、大谷翔平選手の活躍で日本中が熱狂したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。しかし、次回の2026年大会はNetflixによる独占配信が決まり、これまでのように地上波テレビで観戦することができなくなりました。

このニュースは、スポーツ観戦の主戦場がテレビから有料の配信サービスへと急速に移行している現実を、私たちに突きつけました。この変化は、ファンに何をもたらすのでしょうか。テクノロジーが拓く新たな可能性と、そこに潜む課題について考えます。

広がる「スポーツ視聴格差」

WBCだけでなく、Jリーグや海外サッカー、ゴルフなど、多くの人気スポーツコンテンツが、次々と有料配信サービスへと移行しています。これにより、お金を払う熱心なファンしか観戦できなくなり、これまでテレビを通じてライトなファン層を育んできたスポーツの裾野が狭まってしまうのではないか、という「スポーツ視聴格差」への懸念が高まっています。

配信だからこそ可能な「新たな観戦体験」

その一方で、配信への移行は、テクノロジーを活用した全く新しい観戦体験を生み出す可能性を秘めています。

  • 感情連動型マーケティング:博報堂とDAZNは、視聴者が身に着けたリストバンドで心拍数などの生体データを取得し、試合の盛り上がりが最高潮に達した瞬間を捉えて広告を配信するという先進的な取り組みを進めています。視聴者のポジティブな感情とブランドを結びつける、新しいコミュニケーションの形です。
  • 進化する広告技術:サイバーエージェントとKDDIは、プロレスの試合を3Dで配信し、その映像空間の中にある看板や選手の衣装を広告媒体として差し替える技術を開発。また、ABEMAが展開する、試合中継を中断させずに画面のL字型の帯に広告を表示する「スプリット広告」も、年50〜60%という高い成長率で伸びています。

「邪魔者」から「体験を豊かにするパートナー」へ

残念ながら、多くの動画配信サービスでは、追加料金を払えば広告を非表示にできるオプションが用意されているように、広告は「お金を払ってでも見たくない」存在になりつつあります。しかし、今回ご紹介したようなテクノロジーは、広告を単なる「邪魔者」ではなく、観戦体験を損なわず、むしろ豊かにするパートナーへと変える力を持っています。

スポーツ観戦の未来は、視聴体験を壊さずに新たな価値を提供できる企業が握っていると言えるでしょう。


よげんの書は、主催者の舟久保の個人プロジェクトとして定期的に無料セミナーを開催しています。視聴者の方からの個別のお仕事のご依頼と、ドネーションで運営しています。応援いただける方は以下よりドネーションをお願いします。ささやかなお礼として、(サイトから無料で資料請求いただけますが)セミナーの講演資料とアーカイブ動画をご覧いただけるページをご案内いたします m(_ _)m

※この支援は、Stripeを利用した安全な決済システムで処理されます。本プロジェクトへの支援金は、活動継続の補助などに活用させていただきます。なお、本支援は「寄附金控除」の対象とはなりません。詳細は利用規約をご確認ください。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

sharing is!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。