この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
宿泊者急増と人手不足による現場の負荷
日本の「おもてなし」のあり方が、深刻な人手不足を背景に変化を迫られています。2024年の国内延べ宿泊者数は6億5028万人泊と10年で4割増加しましたが、スタッフ人員は7%減少し、1人あたりの受け入れ数が年間902人に達するなど、現場の負荷が増しています。政府は2030年に訪日客6000万人を目指す中で、この人手不足は大きな障壁です。
省人化が新しい「おもてなし」につながる
この課題をDXや省人化によって乗り越え、新しい顧客体験を生み出す事例が現れています。キーワードは、「Less is More」(減らしても、なくしても幸せに感じる体験を提供する)という視点です。
DXを活用した効率化事例
- アパホテル: 全店に自動チェックイン機を導入し、受付時間を約20秒に短縮することでロビーの混雑を大幅に緩和しました。
- 水明館: JTB商事の清掃ロボットKIRARAが、エレベーターとの自動連携を実現し、人員4名分を代替することで約3年で投資回収が可能とされています。
- ルートイン: IVRyの電話対応AIを約200店舗に導入し、問い合わせ対応を自動化し負担を削減しつつ、会話分析を通じて運営改善にも繋げています。
新しい顧客体験の創出
- 楽天ステイ: 6割弱が素泊まり主体である施設で、客室からの調理形式や無人販売機を導入し、食事を分離。時間的な制約を受けない食事が好評を得ており、過剰なサービスから体験提供へと軸足が移っています。
- コンテナ型ホテル R9: 1泊6200円程度で宿泊を提供し、セルフチェックインと個別ユニット配置で高稼働率を実現。さらに、災害時にはレスキューホテルとして転用できるという、地域防災を両立させたユニークなコンセプトが新しいおもてなしの形を提供しています。

