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アメリカの国際政治学者ジョセフ・ナイ氏(5月に逝去)が提唱した「ソフトパワー」は、文化(映画、音楽など)、価値観、対外援助などを通じて、軍事力であるハードパワーに劣らない求心力を世界にもたらしてきました。ナイ氏は生前、トランプ政権がこのソフトパワーにダメージを与えていると警鐘を鳴らしていました。
実際、トランプ政権は自国優先の政策を次々と打ち出しています。
- 留学生受け入れ資格停止通達:ハーバード大学に対して留学生の受け入れ資格停止を通達しました(一時的に差し止めが認められている状況)。留学生は大学収入の重要な源であり、全学生の27%を占めます。この措置は、米国を目指す人々がもたらす技術革新の低下や多様性の縮小を招く危険性があり、日本企業や官公庁の職員が留学先を検討し直す必要も生じています。
- 海外撮影映画への関税表明:米国外で撮影された映画に対して100%の関税をかける可能性が表明されました。これはハリウッド保護を意図していますが、関税がデジタル配信やテーマパークを含む関連ビジネスにも影響を及ぼし、ソフトパワーの魅力的なコンテンツを通じて得ていた世界の求心力に大きな打撃を与える可能性があります。
これらの政策の結果、反米・嫌米とまではいかないものの、西側諸国や同盟国にも「疑米論」(米国に全幅の信頼を置くのは危ないという批判的な見方)が広がりつつあります。
この疑米論を「好機」と捉えているのが中国です。中国は、東南アジア諸国との関係を深めるなど、アメリカを超えた影響力を求めて動き、独自に「国際調停院」を設立(既に32カ国が署名)するなど、国際的な影響力強化を図っています。

