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現在、中国の通貨である人民元が安値圏にあり、特にユーロに対しては10年ぶりの安値を記録しています(4月22日時点で1ユーロ=8.437元)。元安の背景には、ドルとの連動を維持しつつ、トランプ関税による輸出への打撃を和らげるために、中国の通貨当局が元安を容認している側面があります。
この元安によって、元々安価であった中国製品がさらに安くなり、欧州を中心に世界へ大量に流出しています。
さらに、米国の関税政策の影響で、中国は対米輸出を欧州などの市場へシフトさせています。スマートフォン、電子機器、衣類といった輸出品目は米欧間で重複しているため、安価な製品がヨーロッパに流入し、デフレ圧力を強めています。
中国国内では需要が低迷しているにもかかわらず、工場は稼働を続けなければならないため、過剰生産された製品が世界市場に安価に供給される「デフレ輸出」が加速しています。
この過剰供給は世界中で吸収しきれず、東南アジア諸国の地元企業を直撃しています。例として、インドネシアでは2月末に大手アパレルメーカーが破産し、1万人以上が解雇されました。日本は現在、賃上げとインフレの好循環を継続していますが、世界的なデフレ輸出の拡大は、その好循環を断絶させる可能性も含むため、注視が必要です。

