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日本で長らく滞留していた「タンス預金」が急速に減少しています。金利上昇やインフレ、安全性の懸念を背景に、資金は投資や金利のつく金融商品へと流れ始めており、家計と企業の資金循環改善の予兆が見られます。
タンス預金13兆円減少の背景にある要因
日本国内で、現金を自宅で保管する「タンス預金」が大きく減少しています。2023年1月には約60兆円と試算されていましたが、2025年7月には約47兆円へと、約13兆円も減少しました。この現象の背景には複数の要因があります。
- 金利の上昇
長期金利が17年ぶりの高水準となるなど金利が上昇し、現金を寝かせておくことの「損」が意識され始め、金利のつく定期預金や個人向け国債へ資金を移す動きが進んでいます。 - インフレ/生活費の取り崩し
物価上昇により、生活費を賄うためにタンス預金を取り崩す世帯があります。 - 防犯上の懸念
広域強盗などの報道を受け、自宅に現金を置くリスクを避ける人が増えました。
悲喜交々な面もありますが、資金が滞留することなく投資や消費へと回り始めることで、家計や企業の資金循環が改善し、持続可能な成長につながることが期待されます。
長期金利の上昇とMMFの9年ぶり復活
タンス預金の受け皿の一つとして、超低金利政策で姿を消していたMMF(マネー・マネージメント・ファンド)が、9年ぶりに復活する予定です。MMFは短期国債などで運用され、普通預金の平均0.2%に対し、0.5%近辺の利回りが期待できるため、余剰現金の待機資金の場所として活用されると見込まれています。日本の銀行も欧米に倣い、MMFのブロックチェーン化を進め、分配の自動化や再投資の機動性を高めることを検討しています。
インフレ対策として広がる投資の裾野
投資への関心も高まっています。日経新聞の読者調査によると、投資実施率は72%に達し、そのうち2020年代に始めた人が約3割(29%)を占めており、投資の裾野が広がっています。毎月の新規投資額の中央値は10万円と高水準であり、現役世代(20〜40代)が現預金を投資へ振り向けていることが分かります。投資のきっかけとしてNISAが45%と最も多く、目的としては老後資産形成(67%)に加え、インフレ対策も半数近く(49%)に上っています。現金偏重を改めようとする動きが加速していることが示唆されています。

