この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
20代の外出率が70代を下回る
日本の若者の行動範囲が縮小しています。国土交通省のデータによると、休日外出率は長期的に低下し続けており、特に20代の外出率は約47%と、70代の外出率を下回るという意外な事態となっています。かつて「若者といえば活動的」とされたイメージは崩れ、今や休日でも半分以上の若者が家から出ないという「移動減少社会」が静かに進行しています。
移動コストの壁とタイパ志向
移動が減少する大きな理由のひとつは経済的な障壁です。10代・20代の4人に1人が、移動費の高さが原因で留学や部活動の遠征、趣味の挑戦などを諦めています。これに加え、オンラインで何でも完結できる環境が整ったことで、移動にかかる時間や労力を「コスト」と捉える「タイパ(タイムパフォーマンス)思考」が定着し、ネットで済ませる選択が当たり前になっています。
航空・鉄道各社のビジネスモデル転換
移動の減少は、交通インフラ企業の戦略を根底から揺さぶっています。JALは将来の顧客を育てるため、自社の機体をLCC(ZIPAIR)に回すなど、従来のブランド構造を超えた対応に踏み込んでいます。JR東海も、移動人口の減少を前提に、新幹線に完全個室などの高単価なサービスを導入し、1人当たりの単価を上げる方向へ舵を切らざるを得なくなっています。
移動がもたらす「自己肯定感」と「機会の格差」
しかし、移動の減少をそのまま受け入れることは、社会にとって大きな損失です。データによれば、移動が多く居場所が多様な若者ほど、自己肯定感や挑戦する気持ちが高いことが示されています。JALが若者の夢を支援する「DREAM MILES PASS」を始めたように、移動のコストを下げ、異なる文化や環境に触れる機会を広げることは、若者の経験の格差を埋め、国全体の競争力を再設計するための極めて重要なテーマです。

