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AIが経営の意思決定に参画する時代へ。仮想役員からAIクローン部長まで、最新事例を解説
SF映画の世界だと思っていた「AIとの協働」が、いよいよ現実のものとなり始めています。特に、企業の経営という最も重要な意思決定の場にAIが「仮想役員」として参加する動きは、私たちの働き方を根底から変える可能性を秘めています。今回は、AIがビジネスパートナーとなる未来を予感させる3つの先進的な事例をご紹介します。
事例1:キリンHDの経営会議に「仮想役員」が登場
キリンホールディングスは2025年7月、経営戦略会議にAI仮想役員「CoreMate」を導入しました。このAIは、マーケティングや法務など、それぞれ専門分野を持つ12の人格で構成されています。過去10年分の取締役会の議事録や市場データなどを学習し、客観的な情報に基づいて意見や代替案を提示することで、経験や直感だけに頼らない、迅速で質の高い意思決定をサポートします。
事例2:旭鉄工が生み出した「AIクローン部長」
自動車部品メーカーの旭鉄工では、ChatGPTを活用して部長9人の思考を学習した「AIクローン」を自社で開発しました。AIクローン部長は、工場の設備データを常に監視し、生産工程に異常の兆候が見られると即座に社内チャットで注意を促します。人間の部長の指示と組み合わせることで、生産の無駄をなくし、効率化を進めています。さらに、社長や人事総務部長のAIクローンも作成し、社員からの相談の一次対応を任せることで、管理職の負担を大幅に軽減しているそうです。
事例3:明治安田生命のほぼ全社員に「AI秘書」
明治安田生命では、約47,000人のほぼ全社員にAI秘書「MYパレット」を導入する計画を進めています。このAI秘書のすごいところは、単なる指示待ちではない点です。例えば、営業担当者が顧客との会話で「ご夫婦でゴルフを始めたそうです」とAI秘書に伝えておくだけで、AIが自律的に判断し、「来月のゴルフイベントのご案内を作成しておきました」と次のアクションを提案・実行してくれるのです。この導入により、業務効率は体感で約3割向上すると期待されています。
AIと働く未来はすぐそこに
日本の業務フローへのAIエージェント導入率はまだ各国に比べて低いものの、深刻な人手不足を背景に、AIへの投資意欲は非常に高いのが現状です。今回ご紹介したような事例が広がることで、多くの人がAIをパートナーとして共に働く社会が、想像よりも早く訪れるかもしれません。