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教員の長時間労働解消のため、部活動や水泳授業といった学校教育の一部を民間に委託する動きが拡大しています。これは民間企業にとって新たな収益源となりますが、同時に家計の費用負担が増すことで、子どもたちの間で部活動の体験格差が広がる懸念も生じています。
教員負担軽減のための部活動・水泳授業の民間委託
教員の働き方改革の一環として、学校の部活動や水泳授業の民間委託が進んでいます。これは民間企業にとって新たな収益源となっており、学校プールの老朽化や改修コストの重さも背景にあります。
フィットネスクラブによる受託事業の拡大
スポーツスクール事業を展開するリーフラスは、すでに347校で1,990の部活動を受託し、指導員2,150人を抱えるなど、この分野で急速に規模を拡大しています。ルネサンスは水泳授業の受託を133校まで増やしており、店舗プールの稼働率向上と会員獲得に繋げています。コナミも2024年度に128校から受託を受けるなど、規模を拡大しています。
民間移行による家計費用の増加と体験格差の懸念
しかし、民間に委託されることで、家計の費用負担が増すという懸念が生じています。インフレと人手不足により、遠征費や用具代自体がすでに高騰していますが、民間移行が進むと費用がさらに膨らみやすい傾向があります。学校運動部の年間費用が約5.1万円であるのに対し、スポーツクラブの費用は約15.6万円と約3倍の差があります。
この費用の差が、経済的な理由から部活動への参加を諦めざるを得ない子どもたちを生み出し、体験格差を広げる可能性があります。人手不足の解消を目指す取り組みは重要ですが、それによって生まれる格差にも目を配り、カジュアルな活動や本格的な活動など、多様な選択肢を用意することで、経済状況にかかわらずやりたい人が参加できる環境づくりが求められています。

