ドルへの不信が募り「通貨Gゼロ」状態ができあがる|よげんの書:25年10月号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


アメリカの政策に対する不信感からドルの信用が低下し、各国の中央銀行が金保有を急増させています。次の基軸通貨が見えない中、世界のマネーは分散し「通貨Gゼロ」という新たな状態に向かっています。

中央銀行による金保有の急増とドルの信用低下

近年、関税、貿易規制、移民政策といったアメリカの政策により、ドルの不信感が強まっています。その結果として、金の価値が高まり、各国の中央銀行による金保有量が急増しています。特に中央銀行が準備資産として保有する割合では、金がユーロを上回り、ドルに次ぐ資産となりました。金保有量は「金・ドル本位制」が終了した1965年並みの水準に戻っています。東欧やアジア各国が金保有比率を引き上げる中、特にポーランドやアジア各国が保有比率を引き上げています。

中国の積極的な金市場参入と「通貨Gゼロ」の時代

特に中国が積極的に動いています。中国は香港にオフショア金庫を開設し、人民元建ての金取引を活発化させ、世界トップの金市場運営を目指しています。ロシアも市場を整備し、価格への影響力を狙っています。この背景には、ドルからの脱却という狙いがあり、台湾有事のような事態が発生した場合に、ドル資産が凍結されるリスク(ロシアのウクライナ侵攻時の制裁と同様)を見据え、凍結されにくい金へと資産をシフトしていると考えられています。

金本位制への回帰は、採掘量の限界から非現実的であるという指摘があるため、ドルを牽引役とするG7の概念を通貨に当てはめた「通貨Gゼロ」状態が始まる可能性があります。世界のマネーは一つの基軸通貨に頼らず分散する方向に向かうと見られています。

デジタル決済「バコン」による自国通貨復活の事例

このような状況下で、ドルに依存しない経済体制を構築する事例として、カンボジアの取り組みが注目されます。カンボジアは、中央銀行主導でデジタル決済システム「バコン」を導入し、銀行を横断する接続と統一QRコードによるスマホ決済を実現しました。これにより、これまでドルが主流だった国内市場で自国通貨リエルの流通が復活し、2024年の取引額は前年比でほぼ倍増、決済件数6億件のうち約半分がリエル建てとなり、GDPの約3倍まで通貨循環を広げました。これは、中央銀行総裁であるチア・セレイ氏がドル依存の弱さに立ち向かい、自国通貨の価値を復活させた成功例であり、日本のソラミツもブロックチェーン基盤を提供することで貢献しています。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

まずはぜひセミナーをご覧ください。そして「セミナーの共同開催」や、よげんの書をもとにした研修「ミライノミカタワークショップの開催」など、マーケティング活動をご一緒させていただく機会を検討いただける場合はお気軽にお問い合わせください。Driving Forceをともに掴み、未来を一緒に創っていくことができれば幸いです。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。