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アメリカの政策に対する不信感からドルの信用が低下し、各国の中央銀行が金保有を急増させています。次の基軸通貨が見えない中、世界のマネーは分散し「通貨Gゼロ」という新たな状態に向かっています。
中央銀行による金保有の急増とドルの信用低下
近年、関税、貿易規制、移民政策といったアメリカの政策により、ドルの不信感が強まっています。その結果として、金の価値が高まり、各国の中央銀行による金保有量が急増しています。特に中央銀行が準備資産として保有する割合では、金がユーロを上回り、ドルに次ぐ資産となりました。金保有量は「金・ドル本位制」が終了した1965年並みの水準に戻っています。東欧やアジア各国が金保有比率を引き上げる中、特にポーランドやアジア各国が保有比率を引き上げています。
中国の積極的な金市場参入と「通貨Gゼロ」の時代
特に中国が積極的に動いています。中国は香港にオフショア金庫を開設し、人民元建ての金取引を活発化させ、世界トップの金市場運営を目指しています。ロシアも市場を整備し、価格への影響力を狙っています。この背景には、ドルからの脱却という狙いがあり、台湾有事のような事態が発生した場合に、ドル資産が凍結されるリスク(ロシアのウクライナ侵攻時の制裁と同様)を見据え、凍結されにくい金へと資産をシフトしていると考えられています。
金本位制への回帰は、採掘量の限界から非現実的であるという指摘があるため、ドルを牽引役とするG7の概念を通貨に当てはめた「通貨Gゼロ」状態が始まる可能性があります。世界のマネーは一つの基軸通貨に頼らず分散する方向に向かうと見られています。
デジタル決済「バコン」による自国通貨復活の事例
このような状況下で、ドルに依存しない経済体制を構築する事例として、カンボジアの取り組みが注目されます。カンボジアは、中央銀行主導でデジタル決済システム「バコン」を導入し、銀行を横断する接続と統一QRコードによるスマホ決済を実現しました。これにより、これまでドルが主流だった国内市場で自国通貨リエルの流通が復活し、2024年の取引額は前年比でほぼ倍増、決済件数6億件のうち約半分がリエル建てとなり、GDPの約3倍まで通貨循環を広げました。これは、中央銀行総裁であるチア・セレイ氏がドル依存の弱さに立ち向かい、自国通貨の価値を復活させた成功例であり、日本のソラミツもブロックチェーン基盤を提供することで貢献しています。

