この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
最低賃金引き上げと就業調整の混乱
近年、日本では最低賃金が着実に引き上げられており、各都道府県が国の目安を超える独自の引き上げを行う事例も増えています。しかし、2025年10月には、例年であれば発行されるはずの最低賃金の改定を先延ばしにする県が相次ぎました。その背景には、賃上げによって年末にかけて「106万円・130万円の壁」を意識した就業調整が加速し、深刻な人手不足が発生することへの企業側の懸念があります。このように、賃上げという本来喜ばしいはずの施策が、皮肉にも現場の働き方を複雑化させているのが現状です。
「もっと働きたい」は少数派?働く人の本音
厚生労働省の調査によると、労働時間を「増やしたい」と考えている人は就業者全体のわずか6.4%にとどまります。一方で、9割以上の人は「現状維持」または「労働時間を減らしたい」と考えており、生活のバランスを優先する傾向が強まっています。労働時間を増やしたいと願う少数派の多くは、週35時間未満で働く層に集中しており、フルタイムで働く人々にこれ以上の負担を強いることは、現実的に極めて困難な状況にあります。
潜在労働力100万人の専業主婦層をどう活かすか
人手不足の解消に向けた鍵の一つは、現在500万人以上存在する専業主婦層にあります。調査ではそのうち100万人以上が「働きたい」という意向を持っており、これは労働力人口の約2%に相当する無視できない規模です。しかし、子育てや介護との両立、勤務時間や通勤の負担といった現実的な壁が立ちはだかっており、これまでの制度や支援策だけでは不十分であることが浮き彫りになっています。
「生産年齢人口」という固定概念を壊す
これからの働き方を考える際、15歳から64歳を「生産年齢人口」とする従来の枠組み自体を見直す時期にきています。既に65歳以上の就業者は900万人を超えており、年齢で支え手と受け手を分ける考え方は、多様な働き方の実態を捉えきれなくなっています。今後は「世代」ではなく「労働力人口」として捉え直し、年齢に縛られない働き方を支える制度の再設計と、既成概念という「壁」を壊していく姿勢が求められます。

