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2025年度の最低賃金の目安が示され、過去最大の上昇幅となりましたが、これにより「最低賃金近くで働く人」が増加するという現象が起きています。
最賃の引き上げと全国的な1,000円超え
2025年度の全国平均の最低賃金目安は1,118円で、過去最大の63円引き上げ(伸び率6.0%)となりました。これにより、全国すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超えます。 地方でも、物価高や人材流出を防ぐ目的で、国が定める目安に上乗せして引き上げを進める動きが広がっており、例えば鳥取県は目安プラス9円としています。
最低賃金付近に集まる労働者
最低賃金が引き上げられることで、その恩恵は直ちに手取りに反映されるというメリットがある一方で、最低賃金近くで働く人が急増しています。現在、その数は約700万人に達し、過去10年で3倍になりました。これは、最低賃金の伸び率が賃金全体を上回っているためです。
政府は「2020年代に平均1,500円」を目指しており、そのためには今後毎年7.3%ずつ引き上げていく必要があります。このペースが維持されると、当面は最低賃金近傍の就労者がさらに増えやすくなると見込まれます。特に中小・零細企業においては、最低賃金の上昇による影響率が10年で3倍超(2024年度で23.2%)に拡大しており、対応が課題となっています。
韓国の事例から学ぶリスク
最低賃金の急激な引き上げにはリスクも伴います。韓国では、2018年と2019年の2年間で最低賃金を29%も引き上げる政策を実施しました。その結果、従業員を雇用する自営業者が大幅に減少し(165万から137万事業者に減少)、景気の重荷となった可能性が指摘されています。
日本は韓国ほど急激ではないものの、大きな伸び率を維持していく必要があるため、中小企業が賃上げ分を賄うための対策が不可欠です。具体的には、価格転嫁支援と省人化投資を同時に進め、生産性の向上を通じて賃上げを吸収する「良い循環」を作っていく設計が求められます。