最低賃金が増えると最低賃金近くで働く人が増えることがわかる|よげんの書:25年8月号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


2025年度の最低賃金の目安が示され、過去最大の上昇幅となりましたが、これにより「最低賃金近くで働く人」が増加するという現象が起きています。

最賃の引き上げと全国的な1,000円超え

2025年度の全国平均の最低賃金目安は1,118円で、過去最大の63円引き上げ(伸び率6.0%)となりました。これにより、全国すべての都道府県で最低賃金が1,000円を超えます。 地方でも、物価高や人材流出を防ぐ目的で、国が定める目安に上乗せして引き上げを進める動きが広がっており、例えば鳥取県は目安プラス9円としています。

最低賃金付近に集まる労働者

最低賃金が引き上げられることで、その恩恵は直ちに手取りに反映されるというメリットがある一方で、最低賃金近くで働く人が急増しています。現在、その数は約700万人に達し、過去10年で3倍になりました。これは、最低賃金の伸び率が賃金全体を上回っているためです。

政府は「2020年代に平均1,500円」を目指しており、そのためには今後毎年7.3%ずつ引き上げていく必要があります。このペースが維持されると、当面は最低賃金近傍の就労者がさらに増えやすくなると見込まれます。特に中小・零細企業においては、最低賃金の上昇による影響率が10年で3倍超(2024年度で23.2%)に拡大しており、対応が課題となっています。

韓国の事例から学ぶリスク

最低賃金の急激な引き上げにはリスクも伴います。韓国では、2018年と2019年の2年間で最低賃金を29%も引き上げる政策を実施しました。その結果、従業員を雇用する自営業者が大幅に減少し(165万から137万事業者に減少)、景気の重荷となった可能性が指摘されています。

日本は韓国ほど急激ではないものの、大きな伸び率を維持していく必要があるため、中小企業が賃上げ分を賄うための対策が不可欠です。具体的には、価格転嫁支援と省人化投資を同時に進め、生産性の向上を通じて賃上げを吸収する「良い循環」を作っていく設計が求められます。


よげんの書は、主催者の舟久保の個人プロジェクトとして定期的に無料セミナーを開催しています。視聴者の方からの個別のお仕事のご依頼と、ドネーションで運営しています。応援いただける方は以下よりドネーションをお願いします。ささやかなお礼として、(サイトから無料で資料請求いただけますが)セミナーの講演資料とアーカイブ動画をご覧いただけるページをご案内いたします m(_ _)m

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。