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日本発の技術である「ペロブスカイト型太陽電池(PSCs)」は、薄くて軽量で曲がる特性を持つ次世代型太陽電池です。変換効率が高く、低コストで製造できるため、従来のシリコン型を補完・代替する技術として期待されています。これは建物の壁や窓、自動車などに「貼れる太陽電池」として注目されています。
PSCsの普及に向けた課題克服が急速に進んでいます。
- 耐久性の向上:従来のPSCsは寿命が10〜15年と短かった課題に対し、コニカミノルタは水分を通さない高性能フィルムを開発しました。これにより耐用年数を20年以上に(約2倍に)引き上げ、屋外や壁面での長期運用が現実的となり、2026年度からの量産・サンプル出荷を計画しています。
- 政策による後押し:経済産業省は、東京・大阪など4都府県に対し、PSCsの導入目標の策定を要請しました。東京は土地が少ないため太陽光発電の導入量が少なかったのですが、PSCsを都市構造に適した形で活用し、2040年に向けて55万世帯分(2ギガワット)の導入を目指すなど、政策的な期待も膨らんでいます。
- 農業との両立:イタリアの研究では、PSCsが発電しながら、その下で育てた作物の成長を促進する「一石三鳥」の可能性が確認されました。PSCsは光合成に必要な波長のみを透過させ、強すぎる光を和らげることで、屋内外農業に有効です。これにより、発電と農業を両立する農地活用型の発電市場として、2040年に2兆4000億円規模への成長が見込まれています。
これらの進展により、PSCsは脱炭素化だけでなく、都市のレジリエンス確保や食糧生産の効率化にも貢献し得る、日本が誇るべき技術として大きな期待を集めています。

