「米国なき世界」とα世代の台頭が重なる年明け ── 2026年1月のPEST分析

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2026年の年明けは、静かな不安とともに始まりました。

それは突発的な危機というよりも、これまで進んできた変化が前提になりつつあるという感覚です。政治では国際秩序の揺らぎが鮮明になり、経済では格差と分配の構図が深まり、社会ではα世代が現実のプレーヤーとして浮上し、テクノロジーではソブリンAIという言葉が訴えられはじめています。

今月は、PEST分析を通して、さまざまな視点から観察を行い、それらを貫く何かを見つけていく必要があると感じました。

POLITICS:政治
「米国なき世界」が選択肢になる

ユーラシア・グループが発表した、今年の世界10大リスクの筆頭に「トランプ革命」が挙げられました。注目すべきは政策の内容だけではありません。より本質的なのは、監視機能や制度的抑制が解体されることへの警戒です。制度の安定性が損なわれたとき、リスクは単発ではなく連鎖的に広がる可能性があります。

グリーンランドを巡る関税圧力や安全保障問題は、その象徴です。気候変動によって北極圏の戦略的価値が高まるなか、19世紀型のモンロー主義を想起させる姿勢が再び前面に出てきました。「まず威嚇する」という態度は、同盟国との緊張を高め、国際秩序を不安定化させます。

さらに、米国が多くの国際機関から距離を置く動きを見せることで、「米国なき世界」という言葉が現実味を帯びています。多国間ルールを支えてきた中心国が後退すれば、その空白を埋めようとする勢力が必ず現れます。中国が主導権を狙う動きは、その延長線上にあります。

一方で、国内政治では分配を前面に出す選挙戦が展開されました。減税や負担軽減が強調される一方で、社会保障改革や財政再建といった構造的課題は後回しにされがちです。民衆主義のもとでは、赤字は拡大しやすい構造があります。短期的な安心と引き換えに、長期的な持続可能性が揺らぐ可能性も否定できません。

金融政策を巡る動きも不安定です。米国の中央銀行の独立性が疑問視され、「影の議長」という言葉まで浮上する状況は、市場と政治の距離が縮まりつつあることを示しています。

2026年の政治は、「制度が揺らぐ」という感覚を共有するところから始まっています。

ECONOMY:経済
資本と労働のバランスが問われる

経済面では、格差の拡大があらためて可視化されています。米国では分断の中で育つ世代が語られ、日本でも上位0.01%層の所得集中が話題になりました。格差は社会的信頼の土台に影響を与えます。

同時に、日本企業の配当総額は過去最高水準に達しました。株主還元が進み、家計にも恩恵が広がる一方で、実質賃金は減少が続いています。資本に報いる構造と、労働に報いる構造のバランスが問い直されています。人手不足はさらに深刻化し、大型工事を受注できない企業が増えています。需要はあるのに供給できないという状況は、成長機会を損ないます。完全雇用に近い状態が続くなかで、省人化投資や賃上げの圧力は高まりますが、それが生産性向上につながるかは別問題です。

一方で、「ぬい活」と呼ばれる市場の拡大は興味深い現象です。物価が上昇するなかでも、思い出や愛着に対する支出は伸びています。価格ではなく意味に対して支払う消費が、静かに広がっています。

経済は、数字以上に「分配」と「心理」によって動いているように見えます。

SOCIETY:社会
α世代と時間の価値

社会面では、α世代の存在感が増しています。彼らの多くが人生100年を超える可能性があるとすれば、教育、雇用、年金といった制度は前提から見直す必要があります。企業の約3割がα世代向けの専門組織を設立しているという調査もありました。十数年後の消費や雇用の中心を見据え、ブランドや商品開発を再設計する動きが始まっています。

同時に、「アフォーダビリティ」という言葉が再浮上しています。これは価格の問題だけに止まりません。時間、心理的負担、選択疲れといった広い意味での「負担の総量」が問われています。飲食店のファストパスに追加料金を払う行動は、時間が可処分所得以上に希少な資源になっていることを示しています。レス・イズ・モアが「ちょうど良い」と感じる社会に進んでいる感覚を覚えます。

教育の過熱や中学受験の難化も、競争の限界を示す一例です。成果を求めるあまり、制度や個人に過剰な負荷がかかる構図が浮かび上がります。

社会は、量的拡大ではなく「質」と「持続可能性」を問い始めています。

TECHNOLOGY:技術
主権と身体性を求める人たちが増える

テクノロジー領域では、「ソブリンAI」という概念が重要になっています。言語や文化を守るために、国産AIや地域連携が模索されています。AIは単なるツールではなく、価値観を内包する存在だからです。

インフレの格差の進行によるリアル体験の高額化は、仮想空間への移行を後押ししています。経済格差が広がるなかで、仮想空間はある種の「解放」の場として機能し始めています。一方で、AI時代に必要とされる能力として「身体性」や「五感」が再評価されています。知識の蓄積よりも、感性や判断力が価値を持つという逆説が見えます。

さらに、SaaSや広告の内製化、AIによる業務代替が進み、「ツール中心」から「エージェント中心」への移行が加速しています。企業の競争力は、単にシステムを導入することではなく、AIをどう統治し、どう活用するかにかかっています。

制度と世代が同時に変化する

2026年1月のPESTを通して感じるのは、「制度」と「世代」が同時に移り変わり始めているということです。

国際秩序が揺らぎ、財政の持続性が問われ、α世代が台頭し、AI主権とSaaSの死が議論される。

それぞれは別のニュースですが、根底では「前提の書き換え」が進んでいます。今年は、不安定さを前提としたうえで、どの立場を選び、どの変化を受け入れて、どの価値を守るのかが問われる一年になりそうです。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。