パワーカップルが増えても消費を牽引できない家庭の懐事情が見えてくる|よげんの書:25年10月号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


共働きで高年収の「パワーカップル」世帯は増えていますが、可処分所得の増加分の大半が貯蓄に回り、実質的な個人消費は停滞しています。インフレによる実質賃金のマイナスが続く中、家計が将来への備えを重視する姿勢が明らかになっています

高額消費を牽引するパワーカップル世帯の増加

夫婦ともに年収が多い共働き夫婦、いわゆる「パワーカップル」(それぞれ年収700万円以上など)は増加傾向にあり、夫婦ともに年収1,000万円超の世帯は約11万世帯へと倍増しています。専業主婦世帯は2024年に508万世帯に減少し、若年層ほど共働き志向が強まっており、今後もパワーカップルは増えていくと想定されています。これらの世帯は、家事代行や総菜宅配といった外注支出や、不動産、教育、家電などの高額消費を押し上げています。

可処分所得の増加分が貯蓄に回る消費の停滞

勤労者世帯の可処分所得は過去10年間で約10万円増え、2024年には月52万2,569円に達していますが、消費支出は月32万円にとどまり、10年前から1万円ほどしか伸びていません。これは、増加した可処分所得の大半が貯蓄に回っていることを意味します。インフレや将来に備える志向が強まっているため、実質個人消費はコロナ前の水準に戻らず、停滞が続いています。


消費を牽引する層を増やすためには、転勤制度の廃止や硬直的な労働市場を改め、働き方を豊かにし、子育てをしながらでもパワーカップルでいられる安心感を高めることが求められます。パワーカップルの一般的な基準とされる一人700万円という年収も、今や米国やドイツなどの平均水準に届いていません。

実質賃金マイナス回復には5年かかる見込み

賃金上昇はインフレに追いついていません。2022年以降のインフレにより、実質賃金は2022〜2024年度の3年間で累計マイナス4.4%となっています。5%を超える賃上げが実現しても、インフレが続くため、家計の体感的なダメージはなかなか回復しにくい状況です。政府目標である実質賃金プラス1%/年が続いたとしても、目減りした給料を2021年度水準に戻すには約5年かかる見込みです。賃上げの定着、生産性向上、適正な価格転嫁を同時に回し、実質ベースで賃金が伸びるというノルムを途切れさせず続けることが、消費を促す好循環に必要とされます。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

まずはぜひセミナーをご覧ください。そして「セミナーの共同開催」や、よげんの書をもとにした研修「ミライノミカタワークショップの開催」など、マーケティング活動をご一緒させていただく機会を検討いただける場合はお気軽にお問い合わせください。Driving Forceをともに掴み、未来を一緒に創っていくことができれば幸いです。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。