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希少資源が国際交渉のジョーカーに
希少資源であるレアアースは、国際交渉における強力な切り札(ジョーカー)として機能することが、最近の米中の駆け引きで示されました。 2025年7月、中国はレアアースの輸出規制緩和を提案し、その引き換えとして、アメリカが中国への半導体(H20)輸出を再開するという動きがありました。この事例は、アメリカが中国への圧力や対抗措置を講じているにもかかわらず、レアアースの確保のためには譲歩せざるを得なかった状況を浮き彫りにしています。
中国の独占体制と環境汚染を顧みない低コスト戦略
中国は過去40年かけて、レアアースの独占体制を築き上げてきました。現在、中国はレアアースの採掘の60%、精錬の90%以上を占める独占的な地位にあり、強い交渉力を持っています。 中国が環境汚染を顧みずに低コストで安価な輸出を続けた結果、環境配慮が必要なアメリカなどの他国のレアアース生産は採算が悪化し、撤退を余儀なくされました。実際に、中国が輸出規制を行った際には、フォードやスズキなどのEV関連製造が停止する事例も発生しており、EVサプライチェーンの中国依存リスクが顕在化しています。
日本の「レアアース大国」へのチャンス
しかし、日本には希望が見えています。南鳥島近くの海底で、世界3位のシェアになる可能性を秘めた1600万トンのレアアース泥(レアアースデイ)が発見されました。この資源は重希土類を5割含有しており、中国依存を打破する新たな国産資源のジョーカーになる可能性があります。 日本政府はこれを経済安保強化の要と捉え、2028年までに日量3500トンの生産体制確立を急いでいます。この国産資源の確保は、製造イノベーションを推進し、「中国ジョーカー」への対抗策となることが期待されます。

