この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
3Dデータ公開による自宅修理サービスの開始
製品が壊れたらすぐに買い替えるのではなく、「直して長持ちさせる」という消費行動への転換が進んでいます。この流れを後押ししているのが、EUで施行が始まった「修理する権利」の義務化と、3Dプリンター技術の進化です。 シェーバーメーカーのフィリップスはチェコで自宅修理サービスを開始し、シェーバーの交換部品の3Dデータを無料で公開しました。利用者は家庭用3Dプリンターで部品を自分で作って修理できるようにしています。
修理格差を縮めるリペア文化の広がり
「修理する権利」により、メーカーは保証期間が過ぎた後も部品の提供と情報公開が義務付けられています。この動きは、「修理格差」を縮める可能性を秘めており、3Dプリンターを持たない人向けに、図書館などで代行印刷ができる環境も広がり始めています。 また、市民とボランティアが集まり無料で家電や衣類を修理する「リペアカフェ」ネットワークは世界で2500拠点以上に広がり、リペア文化を育てています。
モジュラー設計と「直せて長持ち」する製品競争
最初から修理しやすいように設計された製品も増えています。Framework Laptopは全モジュールを数分で交換できる設計を採用。Fairphoneのようなスマートフォンは、モジュールで構成され、交換用部品と8年間のソフトウェア更新を提供し、長期使用を可能にしています。 これにより、消費行動は「壊れたら買い替え」から「直して長持ち」へと転換し、所有コストを抑えることに繋がっています。
フランスの「耐久性指標」が市場を動かす
フランスでは2025年1月にテレビ、4月に洗濯機に10段階の「耐久性指標」の表示が義務付けられました。価格の近くに寿命と修理の容易さが見える化されており、高得点の洗濯機の売上が伸びるなど、消費者の長期使用志向が加速しています。競争の軸は「新製品」から「直せて長持ちする製品」へと移行しつつあります。

