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満額回答が相次ぐ春季交渉:高水準の賃上げは維持されたが
2025年春、日本企業の賃上げは高い水準を継続しました。平均賃上げ額は1万4575円に達し、トヨタや日立といった大手企業が過去最高水準の回答を行うなど、企業の「賃上げ余力」は高まっています。
しかし、手放しで喜べる状況ではありません。物価上昇のスピードが賃上げを上回る「追いかけっこ」の状態が続いており、実質賃金は3年連続でマイナスを記録しています。2025年1月の消費者物価指数は3.2%上昇し、3ヶ月連続で伸びが拡大しています。給料が増えても、財布から出ていくお金の方が増えているという厳しい現実が多くの家庭を直撃しています。
エネルギーと関税が加速させるインフレの懸念
今後の見通しも予断を許しません。世界的なエネルギー価格の上昇に加え、トランプ政権による関税政策がコストプッシュ型のインフレをさらに加速させる懸念があります。
これまでの日本は、デフレの中で「より良いものをより安く」提供することで世界と戦ってきました。しかし、その成功体験を国内市場でもそのまま適用し続けた結果、コストカットばかりが進み、経済全体が停滞する「失われた30年」を招いてしまいました。今、私たちは「安いものをたくさん売る」モデルから脱却し、物価上昇を乗り越えられるだけの付加価値をどう生み出すかという転換を迫られています。
「実質賃金プラス」へ向けた労働生産性の壁
持続的な賃上げを実現し、ラリーに打ち勝つためには、労働生産性の向上が不可欠です。現在、日本の生産性上昇率は年平均0.7%ですが、5%以上の賃上げを続けるには年1%以上のペースが必要とされています。
欧米諸国がデジタルスキルの習得やキャリア開発支援への投資を通じて生産性を伸ばしているのに対し、日本はまだその歩みが遅れています。人材を「コスト」として見るのではなく、将来の成長のための「投資対象」として捉え直し、デジタル活用や教育、柔軟な働き方の支援を強化することが、物価上昇に負けない強い家計と経済を作るための唯一の処方箋です。

