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インフレと賃上げの好循環を阻む供給不足
日本ではインフレと賃上げによる経済の好循環が進み始めていますが、せっかく生まれた需要に対して、供給不足が起きる場面が常態化しつつあります。この背景には、深刻な人手不足とIT導入の遅れがあります。
建設業の工事停滞と供給能力の低下
建設業界では、人手不足に加えて残業規制(2024年より)の影響もあり、工事が停滞しています。未着手または未完了の工事高は過去最大の15兆円を超えて膨らんでおり、全国各地で着工が停滞しています。 建設就業者は10年間で6%減少し、高齢化も進行しているため、供給能力の低下は避けられません。IT導入の遅れから省人化も進まず、生産性の低迷が経済成長の余地を削っています。
世界的需要と報われない労働環境に苦しむアニメ市場
世界的に需要が大きいアニメ市場は、2023年に3.3兆円と過去最高を更新しました。しかし、供給側では「描き手」(アニメーター)が不足し、2050年には制作者が2019年比で3割減となる試算が出ています。 年収240万円未満のアニメーターが半数近くいるという、報われない労働環境が、優秀な人材の流出を招いています。需要拡大に供給が追い付かない状況を解消するため、若手育成や賃金改善の努力が急務とされています。
経済全体の「供給不足ギャップ」の深刻化
日本経済全体を見ると、需給ギャップは▲0.2%と均衡に近いものの、雇用人員判断DIが▲35という深刻な人手不足を示しています。経済は「供給不足ギャップ」へ傾き始めていると言えます。 ショッピングセンターの開業件数が最少となったり、新宿南口の大型再開発が延期になったりするなど、需要があっても供給が追い付かない事例が増えています。中小企業では人手不足倒産が過去最多となっており、外国人材の活用やDX・AIの急速な導入が待ったなしの状況です。

