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米国政府の効率化を目指す組織「DOGE」(米政府効率化省)が、ワシントンDCを中心に予期せぬ不況の連鎖(バタフライエフェクト)を引き起こしています。
DOGEの設立と効率化の実行
DOGEは、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の主導で2025年1月に創設されました。連邦政府のIT近代化と業務効率化(リストラを含む)を中核施策とし、2月以降、人員最適化と支出の引き締めを厳しく進めました。
大量解雇と地域経済への波及
DOGEの施策により、2025年5月時点で約28万人がレイオフされました。特に公務員が雇用の約25%を占めるワシントンDCでは、需要の急速な冷え込みが発生しました。 さらに、以下の連鎖的な悪影響が見られました。
- 消費の落ち込み: 解雇された人々の多くが高所得者層であったため、彼らの流出や消費の手控えにより、外食や小売の売上が低下しました。
- 民間への影響: 政府契約に依存する民間企業も、政府からの発注削減とリストラに直面し、地域全体の雇用と所得が連鎖的に落ち込みました。
- 格付けの低下: 結果として、ワシントンDCの税収と財政が悪化し、格付けがAa1へ下方修正されました。これにより資金調達コストの上昇懸念が強まっています。
不況の連鎖
この効率化の波は、ワシントンDCの都市構造そのものに打撃を与えています。
- 外食産業の危機: セルフサービス以外のレストランの44%が「2025年中に閉店の恐れがある」と回答しており、さらなる雇用喪失が懸念されています。
- 人流の停滞: 元々リモートワークからの出社戻りが遅れていたDCで、今回のレイオフが重なり、オフィス出社率は約5割に留まっています。このため、平日の中心部の需要は弱いままです。
- 不動産市況の悪化: 住宅在庫は前年同月比で75.6%も急増しており、不動産市況の逆風が強まっています。
この事例は、短期的な効率化を安易に追求し、大量のリストラを行うことが、地域経済全体の需要を冷やし、かえって深い不況の連鎖を生み出すという、思わぬ影響(バタフライエフェクト)があることを示しています。