米国「DOGE」のバタフライエフェクトが不況をもたらすことがわかる|よげんの書:25年8月号より

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米国政府の効率化を目指す組織「DOGE」(米政府効率化省)が、ワシントンDCを中心に予期せぬ不況の連鎖(バタフライエフェクト)を引き起こしています。

DOGEの設立と効率化の実行

DOGEは、トランプ大統領とイーロン・マスク氏の主導で2025年1月に創設されました。連邦政府のIT近代化と業務効率化(リストラを含む)を中核施策とし、2月以降、人員最適化と支出の引き締めを厳しく進めました。

大量解雇と地域経済への波及

DOGEの施策により、2025年5月時点で約28万人がレイオフされました。特に公務員が雇用の約25%を占めるワシントンDCでは、需要の急速な冷え込みが発生しました。 さらに、以下の連鎖的な悪影響が見られました。

  1. 消費の落ち込み: 解雇された人々の多くが高所得者層であったため、彼らの流出や消費の手控えにより、外食や小売の売上が低下しました。
  2. 民間への影響: 政府契約に依存する民間企業も、政府からの発注削減とリストラに直面し、地域全体の雇用と所得が連鎖的に落ち込みました。
  3. 格付けの低下: 結果として、ワシントンDCの税収と財政が悪化し、格付けがAa1へ下方修正されました。これにより資金調達コストの上昇懸念が強まっています。

不況の連鎖

この効率化の波は、ワシントンDCの都市構造そのものに打撃を与えています。

  • 外食産業の危機: セルフサービス以外のレストランの44%が「2025年中に閉店の恐れがある」と回答しており、さらなる雇用喪失が懸念されています。
  • 人流の停滞: 元々リモートワークからの出社戻りが遅れていたDCで、今回のレイオフが重なり、オフィス出社率は約5割に留まっています。このため、平日の中心部の需要は弱いままです。
  • 不動産市況の悪化: 住宅在庫は前年同月比で75.6%も急増しており、不動産市況の逆風が強まっています。

この事例は、短期的な効率化を安易に追求し、大量のリストラを行うことが、地域経済全体の需要を冷やし、かえって深い不況の連鎖を生み出すという、思わぬ影響(バタフライエフェクト)があることを示しています。


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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。