自動販売機台数がじわじわと減少していたことがわかる|よげんの書:25年10月号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


自動販売機(自販機)の台数が人手不足、採算悪化、キャッシュレス化の遅れなどにより減少傾向にあり、2050年には半減する可能性が指摘されています。しかし、人手不足の時代だからこそ、DXを伴う自販機活用は重要であり、用途(JOB)を見つけ出すための実験とチャレンジが求められています。

自販機台数半減の危機と人手不足・キャッシュレス化の遅れ

日本の自動販売機台数は2013年比で2割減少し、現在約204万台となっています。このペースが続くと、2050年には100万台まで半減する可能性があります。

主な減少要因は、飲料補充が重労働であることによる人手不足と、それに伴う物流問題です。採算の悪い場所からの撤去が進んでおり、すでに全国の自販機の約1割は赤字とみられています。また、自販機価格が店頭よりも割高である点や、全国の自販機の6割が現金のみでキャッシュレス化が遅れている点も、利用者の離反を招いています。今後、値上げが続き平均200円超になると、赤字の自販機は2〜3割に増える恐れがあります。

冷凍食品やショーケース型自販機による新たな活用事例

しかし、人手不足が深刻な今だからこそ、DXの推進と自販機の活用はむしろ重要です。実際に、新しい価値を生み出している事例もあります。冷凍食品対応自販機「ど冷えもん」はショーケース型自販機を設置し、QRコードで解錠、PayPayで決済することで地域産品を販売しています。これにより、棚替えの自由度で運用効率を高めています。

ロイヤルホストの事例が示す「用事(JOB)」発見の重要性

自販機ビジネスにおけるチャレンジの重要性は、ロイヤルホスト(ロイホ)の事例に示されています。ロイホは当初、高単価な冷凍食品の自販機「ロイヤルデリ」を駐車場など約30カ所に設置しましたが、高単価で認知不足のため売れ行きが伸び悩みました。しかし、これを店舗前に移設したところ、「ロイホを通りかかった際の追体験」や「営業時間外のテイクアウト代替」といった新しい購買行動(ジョブ)が生まれ、売上が回復しました。

省人化やDXを成功させるには、これまで気がつかなかった人々の「お金を使ってでも解決したいジョブ」を見つけ出すための、地道な実験とチャレンジが不可欠です。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

まずはぜひセミナーをご覧ください。そして「セミナーの共同開催」や、よげんの書をもとにした研修「ミライノミカタワークショップの開催」など、マーケティング活動をご一緒させていただく機会を検討いただける場合はお気軽にお問い合わせください。Driving Forceをともに掴み、未来を一緒に創っていくことができれば幸いです。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。