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自動販売機(自販機)の台数が人手不足、採算悪化、キャッシュレス化の遅れなどにより減少傾向にあり、2050年には半減する可能性が指摘されています。しかし、人手不足の時代だからこそ、DXを伴う自販機活用は重要であり、用途(JOB)を見つけ出すための実験とチャレンジが求められています。
自販機台数半減の危機と人手不足・キャッシュレス化の遅れ
日本の自動販売機台数は2013年比で2割減少し、現在約204万台となっています。このペースが続くと、2050年には100万台まで半減する可能性があります。
主な減少要因は、飲料補充が重労働であることによる人手不足と、それに伴う物流問題です。採算の悪い場所からの撤去が進んでおり、すでに全国の自販機の約1割は赤字とみられています。また、自販機価格が店頭よりも割高である点や、全国の自販機の6割が現金のみでキャッシュレス化が遅れている点も、利用者の離反を招いています。今後、値上げが続き平均200円超になると、赤字の自販機は2〜3割に増える恐れがあります。
冷凍食品やショーケース型自販機による新たな活用事例
しかし、人手不足が深刻な今だからこそ、DXの推進と自販機の活用はむしろ重要です。実際に、新しい価値を生み出している事例もあります。冷凍食品対応自販機「ど冷えもん」はショーケース型自販機を設置し、QRコードで解錠、PayPayで決済することで地域産品を販売しています。これにより、棚替えの自由度で運用効率を高めています。
ロイヤルホストの事例が示す「用事(JOB)」発見の重要性
自販機ビジネスにおけるチャレンジの重要性は、ロイヤルホスト(ロイホ)の事例に示されています。ロイホは当初、高単価な冷凍食品の自販機「ロイヤルデリ」を駐車場など約30カ所に設置しましたが、高単価で認知不足のため売れ行きが伸び悩みました。しかし、これを店舗前に移設したところ、「ロイホを通りかかった際の追体験」や「営業時間外のテイクアウト代替」といった新しい購買行動(ジョブ)が生まれ、売上が回復しました。
省人化やDXを成功させるには、これまで気がつかなかった人々の「お金を使ってでも解決したいジョブ」を見つけ出すための、地道な実験とチャレンジが不可欠です。

