この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。
ウォルマートは来店客の行動データを活用したリテールメディア事業を拡大している
Eコマースが購買の利便性を高めた結果、物理的なリアル店舗の役割の再定義が進んでいます。
小売大手のウォルマートは、デジタル投資を強化し、全米4600店以上の店舗にAIカメラやセンサーを導入しました。来店客の属性(年齢・性別)だけでなく、店内の動線や商品の視認状況などの行動データをリアルタイムで収集しています。
このデータを活用したリテールメディア(店舗内の広告事業)は急成長しており、直近の広告売上高は約1兆円に達した。店舗は単に商品を販売してマージンを得る場所から、顧客行動をデータ化してメーカーに提供する情報発信プラットフォームへと変貌を遂げています。
日本の小売企業も顧客IDの特定や実証実験を通じてデータの価値を高めている
国内の小売業においても、個客データをもとに顧客との関係性を再設計する動きがみられます。
三越伊勢丹は、インバウンドの変動など外部要因に左右されない収益基盤を確立するため、自社アプリとクレジットカードを連携させて顧客を個別のIDで識別する戦略を推進しています。個々の購買行動を把握し、パーソナライズされた提案を行った結果、アプリ会員の年間購買額は非会員の約2倍に向上しました。
ファミリーマートでは、開発中の試作品を店頭で「1円」で販売する取り組みを行っています。決済プロセスをあえて通すことで、試作購入者の顧客IDと過去の購買履歴を紐付け、メーカーへ開発データとして提供します。全国の店舗網を単なる流通チャネルではなく、消費者の反応を精緻に検証するテストフィールドとして活用する試みです。
不特定多数へのアプローチから、特定の個客とのつながりを重視し、顧客解像度を高めて価値を創出することが、リアル店舗の新たな競争力となっています。

