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社会の多様化に伴い明示的な言葉による合意形成が必要とされている
書籍市場において、『言語化の技術』や語彙力をテーマにした書籍がベストセラーとなる一方、「エビデンス」を冠した書籍の刊行数が過去10年で7倍に急増しています。
言語化に対するニーズの高まりは、社会の多様化と人間関係の流動化を背景にしています。共通の暗黙の文脈(阿吽の呼吸や暗黙の了解)を持たない他者に対し、論理的かつ的確に意志を伝える必要性が増しているためです。
また、エビデンス志向の強まりもこれと共通の背景を持ちます。子育てなどの経験的な判断においても、個人の周囲にあるコミュニティでの対話ではなく、統計や客観データへの依存が進む構造がうかがえます。
本音の言語化の不足が集団内の誤解と同調圧力を生んでいる
言語を用いた具体的な意思確認の不足は、「多元的無知」という社会現象を生み出す要因となります。多元的無知とは、組織の構成員が現状の慣習(非効率な会議など)に疑問を感じているにもかかわらず、他者の沈黙を「現状への納得」と誤認し、互いに同調し合う状態を指します。
本音を言語化し相互に検証しない限り、構成員の誰もが望まない形骸化したルールに支配され続け、組織の自浄作用や革新は停滞します。言語化は、こうした集団内の誤解を解消し、不要な同調圧力を緩和するインフラの役割を果たします。
効率的な伝達だけでなくデータをもとに自身で思索する姿勢が求められる
しかし、効率性や端的な伝達ばかりが重視されると、言葉を探し思考を深めるプロセスや、数値データに表れない一次体験の価値が軽視される懸念があります。客観的なエビデンスの無批判な受容は、自発的に問いを立てる思考力を減退させるリスクを孕んでいます。
AIによって容易にテキストが生成される時代だからこそ、客観的なデータに依拠しつつも自身で思索し、時間をかけて対話を重ねる姿勢が重要となります。言葉の重要性と同時に、論理化しきれない領域の価値を認識し、双方向の対話を継続することが今後の課題です。

