「言語化」しないと伝わらない社会がやってくる|よげんの書:26年夏号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


社会の多様化に伴い明示的な言葉による合意形成が必要とされている

書籍市場において、『言語化の技術』や語彙力をテーマにした書籍がベストセラーとなる一方、「エビデンス」を冠した書籍の刊行数が過去10年で7倍に急増しています。

言語化に対するニーズの高まりは、社会の多様化と人間関係の流動化を背景にしています。共通の暗黙の文脈(阿吽の呼吸や暗黙の了解)を持たない他者に対し、論理的かつ的確に意志を伝える必要性が増しているためです。

また、エビデンス志向の強まりもこれと共通の背景を持ちます。子育てなどの経験的な判断においても、個人の周囲にあるコミュニティでの対話ではなく、統計や客観データへの依存が進む構造がうかがえます。

本音の言語化の不足が集団内の誤解と同調圧力を生んでいる

言語を用いた具体的な意思確認の不足は、「多元的無知」という社会現象を生み出す要因となります。多元的無知とは、組織の構成員が現状の慣習(非効率な会議など)に疑問を感じているにもかかわらず、他者の沈黙を「現状への納得」と誤認し、互いに同調し合う状態を指します。

本音を言語化し相互に検証しない限り、構成員の誰もが望まない形骸化したルールに支配され続け、組織の自浄作用や革新は停滞します。言語化は、こうした集団内の誤解を解消し、不要な同調圧力を緩和するインフラの役割を果たします。

効率的な伝達だけでなくデータをもとに自身で思索する姿勢が求められる

しかし、効率性や端的な伝達ばかりが重視されると、言葉を探し思考を深めるプロセスや、数値データに表れない一次体験の価値が軽視される懸念があります。客観的なエビデンスの無批判な受容は、自発的に問いを立てる思考力を減退させるリスクを孕んでいます。

AIによって容易にテキストが生成される時代だからこそ、客観的なデータに依拠しつつも自身で思索し、時間をかけて対話を重ねる姿勢が重要となります。言葉の重要性と同時に、論理化しきれない領域の価値を認識し、双方向の対話を継続することが今後の課題です。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

まずはぜひセミナーをご覧ください。そして「セミナーの共同開催」や、よげんの書をもとにした研修「ミライノミカタワークショップの開催」など、マーケティング活動をご一緒させていただく機会を検討いただける場合はお気軽にお問い合わせください。Driving Forceをともに掴み、未来を一緒に創っていくことができれば幸いです。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。