即答を求める「チョイパ」にこだわる若者が増える|よげんの書:26年春号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


コスパ・タイパに続く第3のパフォーマンス指標

コストパフォーマンス、タイムパフォーマンスに続いて注目されているのが「チョイパ(チョイスパフォーマンス)」です。どれだけ良い選択を、どれだけ少ない負荷でできるか。情報爆発の時代に育った若者たちが、選択そのもののコストを最小化しようとする行動原理を表しています。

背景にあるのは圧倒的な情報量です。世界のデータ通信量は2010年から2024年の14年間で87倍に拡大しました。アメリカでは情報過多が年間140兆円の機会損失を生んでいるという推計もあります。こうした環境で育ったα世代は、AIに好みと予算と条件を伝えて3つの候補を出してもらう──自力で何ページも比較検討する無駄なエネルギーは使わない、スマートな意思決定スタイルへ移行しています。

「考察文化」が映す若者の心理:報われたい消費

チョイパ志向の根底にある心理を読み解くヒントが、三宅香帆氏の著書『考察する若者たち』にあります。ドラマや映画に対して曖昧な批評よりも、作者の意図を当てる「考察」が好まれる現象。これは正解探しを好む心理であると同時に、「参加すれば報われる行動」でもあるという指摘です。考察動画を作ればPVが回り、考察コミュニティで正解を出せば承認される。

将来への期待を持ちにくい世代にとって、消費は「楽しい」以上に「報われるかどうか」が問われます。萌えが感情消費だった平成に対し、推しは応援という行動で報われる設計が令和の消費文化の中核になりました。お金を使うなら確実にリターンが欲しい。購入後に「報われた」と感じられる体験をどう設計するかが、マーケティングにおける重要な課題になっています。

レス・イズ・モア──選択肢を絞る勇気

GoogleのジグソーによるプロジェクトWe the Peopleは、チョイパ時代のAI活用を見事に体現しています。2,400人分160万語の意見をAIで26の主要な主張に整理し、賛成か反対かの二択ではなく、ニュアンスを保ったまま中間的な合意を可視化する試みです。

たくさんの選択肢を並べて「お客様にお選びいただく」という従来のマーケティングは、チョイパの時代には逆効果になりかねません。増やすのではなく引く。足し算ではなく引き算で豊かさを作る「レス・イズ・モア」の発想が、情報過多の社会でこそ求められています。的確に絞り込まれた選択肢を提示し、顧客の背中を押してあげること──そのキュレーションの責任と美学こそが、AI時代における企業の唯一無二の価値へと昇華していくのです。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

まずはぜひセミナーをご覧ください。そして「セミナーの共同開催」や、よげんの書をもとにした研修「ミライノミカタワークショップの開催」など、マーケティング活動をご一緒させていただく機会を検討いただける場合はお気軽にお問い合わせください。Driving Forceをともに掴み、未来を一緒に創っていくことができれば幸いです。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。