リアルの格差によって仮想空間を選ぶ人たちが増える|よげんの書:26年春号より

この記事は、トレンドの原動力を探るマーケティングセミナー「よげんの書」で発表した「よげん」をトピックごとに解説した記事です。よげんの書のウェブサイトから無料セミナーのお申込みや、講演資料やアーカイブ動画をご覧いただけますので、ご関心ありましたらお申込みください。


「夢の国」に子どもが行けなくなっている

ディズニーリゾートの累計入場者は9億人を超えました。しかし、2010年以降に生まれたアルファ世代にとって、ディズニーは「誰もが行く夢の国」ではなくなりつつあります。中学生への調査では、世界観が好きで熱量高く通う層がいる一方、「高すぎてノリで行けない」と距離を置くグループも存在していました。

数字で見ると事態の深刻さが浮かびます。開園当初の1983年、家族4人の入場料は平均賃金の約1.41日分でした。バブル期に1.17日まで低下した後、2000年代以降は再び上昇を続け、現在は約1.92日分と過去最高水準に達しています。アメリカでは入場料が最高209ドルと日本の約3倍です。来場者の構成比では4〜11歳の子どもの比率が低下し、資金に余裕のある40歳以上の大人やインバウンド客が増加。海外からの来場客数が4〜11歳の子どもを上回る現実が、すでに到来しています。

デジタル空間が「遊びの機会均等」をもたらす

テーマパークの高価格路線が進む中(USJも開園当初比で1.6〜2.1倍に値上げ)、低所得世帯の娯楽費は高所得層のわずか34%にとどまります。遊びは生活に必須ではない分、真っ先に削られる支出です。

では、リアルの体験を奪われた子どもたちはどこへ向かうのか。その受け皿がデジタル仮想空間です。オンラインゲームプラットフォーム「Roblox(ロブロックス)」には毎日約5,000万人の子どもたちが集まっています。年間来場者数約2,500万人のディズニーリゾートの2倍の人数を、Robloxはたった1日で集めているのです。AIを活用すれば、プログラミングの知識もお金もなくても自分だけのゲームや世界観を創り出すことができます。土地も資本もいらず、誰でも参加でき、誰でもクリエイターになれる。デジタル空間は土地や資本の制約を超えて機会均等を広げ、アルファ世代にとってリアルと並ぶもう一つの居場所になりつつあります。

消費者から「創造者」へ──マーケティングの前提が変わる

アルファ世代にとって、デジタル空間はリアルの代替ではなく、リアルと対等に並ぶ居場所です。「お客様に消費してもらう」という発想だけでは、デジタルネイティブの若い世代には届きません。彼らは消費者であると同時に創造者でもあります。テーマパークの入場料は払えないが、Robloxなら自分でテーマパークを作れる側になれる──この構造転換は、マーケティングのゲームルールそのものを書き換えていきます。


「よげんの書」は企業や個人が不確実な時代を生き抜くための道標を提供し、仕事や生活のマーケティングに投影していただけることを目的・目標として主催者の個人プロジェクトとして運営しています。

まずはぜひセミナーをご覧ください。そして「セミナーの共同開催」や、よげんの書をもとにした研修「ミライノミカタワークショップの開催」など、マーケティング活動をご一緒させていただく機会を検討いただける場合はお気軽にお問い合わせください。Driving Forceをともに掴み、未来を一緒に創っていくことができれば幸いです。

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この記事を書いた人

舟久保 竜のアバター 舟久保 竜 よげんの書|主催者

総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査に関わるとともに、2020年から師匠の「大久保惠司 氏」とともに企業のマーケター向けに毎月トレンドを発表するセミナーを継続開催する。2025年、大久保氏の逝去後に「よげんの書」をライフワークとして継続することを決意。

本業は2024年1月から株式会社フィードフォースに所属。企業のコマースサイトを顧客体験基盤やCDPとして活用するためのソリューションのマーケティングに携わる。企業と生活者がモノではなくサービスでつながるための、SDL(サービス・ドミナント・ロジック)の実現を目指す。